久々にYouTubeチャンネルのYMRを更新、発売日に購入したVision Proが映像制作者にとって有用なのかどうなのかについて解説するコンテンツを配信した。
本国アメリカではほとんど売れていないといわれている(返品も多いとのこと)Vision Pro、そりゃあ専用のアプリが少ない現時点においてこんな高い製品を買う人が大勢いるわけないよなと思いつつ、それじゃあ映像制作活動のシーンに絞ったらVision Proは買いなのか…結論を先に書いてしまうと絶対に「買いじゃない」、けれども有用なのは間違いなさすぎってくらいには有用…この難しい塩梅を動画とは別に文章の方でもお伝えしていく。
結論「今じゃない…だけど」
現状で4Kサイズ以上の大型ディスプレイを持っていないMacユーザーであれば、表示性能がさすがのAppleクオリティーなVision Proは決して高くない選択肢に入ると思う。
現に僕がそうで、少し前まではEIZOのハイエンドモニターである「CG318-4K(当時約50万円)」を利用していたがメインマシンをMac ProからMacBook Proに変えた際に手放したあとは外部ディスプレイは利用せず、どうせ外部ディスプレイを買うなら中途半端な性能のものではなく高品質な8Kクラスのものが欲しいと考えていた。これがVision Proであれば色の品質も高い上に4K以上(今秋にリリースされる予定のvisionOS2では4Kサイズを横にふたつ並べるほどのレベルにまで拡張できるようになる)の解像度を扱うことが可能な上にそれをどこにでも持ち運べてしまう。
この記事では動画編集にフォーカスを当てているためVision Pro自体のアプリには触れず、主要な機能のひとつである「仮想ディスプレイ(Macの操作画面をVision Pro側で表示させることができる)」を中心に説明するが、ざっくりだが2週間ほどこの機能を使ってみた結果、わかったことや問題として以下の点が挙げられる。
- 画面のリフレッシュレートは落ちない(60fps以上?)、入力遅延も認知できないレベルで快適そのもの
- MacBook Pro側の負荷が特に上がることもなく通常の4Kモニターと同じ感覚で使える
- 高い解像度のおかげでアプリ内にある細かなメニュー項目もある程度視認可能。ただし視力がいい人限定
- カメラの性能はそこまで高くない。手元のキーボードの印字がシチュエーションによっては読めず苦労することあり
- 通信時のビットレートが低いのかDaVinci Resolveなどで動画を再生すると細かなディティールにブロックノイズが出るのと階調が潰れがち。どちらも注意深く見ないと分からないレベルながらも編集上のトラブルの原因になる可能性あり、大事な場面では再生を停止して確認するなどの工夫が必要
- (iPhoneでのテザリング含む) Wi-Fiルーターの性能に関係なく動作・接続の安定性は良好。ただしAirPods Pro(第2世代)との接続はそれなりの頻度で切れる
- 仮想ディスプレイと重なる部分にVision Proアプリがあると視線入力でそこがアクティブになってしまうことがある。しかもその際にマウスカーソルが消失(操作も受け付けなくなる)、これに気付かず混乱してしまうという罠がある
- スピーカー(マイクも)をVision Pro側に設定できない
- どこにいてもほぼ最高の環境を構築できる。広大かつ高品質なディスプレイ環境を持ち出せる高い利便性と日中の強い日差しの下でも視認性抜群。夜中でも余程暗くなければジェスチャーが利用可能
その他にはVision Proの表示性能自体について分かった問題点として「画面内に大きな光源があるとゴーストが発生して表示品質が大きく低下する」、「顔とデバイスの接点から漏れた光がフレアになり表示品質に大きく影響する」、そして「視野角が広くない、トンネルを覗き込んでいるようなイメージ」というのがある。
ここらへんは実際に利用してみないと分かってもらえないことなのでAppleストアなりで試してみてもらう他ないが、優秀なMeta Quest 3と比較してもずば抜けた表示品質を持つVision Proだからより目立つ欠点という印象、重量も大きな欠点のひとつではあるものの、上述した3つの問題も今後の課題なのは間違いない。
条件を満たせばより便利な映像制作が可能
それから、Mini Panel以上のグレーディング機材を使っているユーザーであればすぐ理解してもらえると思うが、実はVision Proひとつあればグレーディングの時にわざわざ手元にMini Panelを持ってくるのではなく自分自身が移動してしまえばいい(Mini Panel以上の機材は物凄く大きい上に重い)というある種チート的な運用が可能、はっきりいってこれにはだいぶお世話になっている…毎回Mini Panelを置くスペースを作ってセッティングするのが面倒でしょうがなかった、Macと外部ディスプレイがもう1台ずつあればそういった手間はなくなるが、そこまでコストをかけるなら最初からVision Pro1台でいいんじゃない?的な。
ブラマジがVision Proに本気で取り組んだら…
最後に、実は今回Vision Proを購入した動機のひとつに「DaVinci Resolveのパネルをエミュレートしたアドオン、またはアプリが出るんじゃないか」という希望的観測(=妄想)がある。
2週間使っていて感じるのは、Vision Proの強力なハンドトラッキング性能があればハードウェアとしてのMini PanelやAdvanced Panelがなくても、あたかもそれらが手元にあるような環境を作り上げることができるんじゃないかと考えている。
現時点で「djay」というアプリで似たようなことが実現されているが、ブラックマジックがその気になりさえすれば出せそう…もしこれが実現すればDaVinci Resolveユーザー界隈ではバカ売れしそうな予感のVision Proなのでした。
▼キョクチが制作・販売している動画教材▼
グラフィック制作・PVやYouTube用の映像制作をやりつつ、YouTubeでのチャンネル運営サポートやコンサルティング、勉強会といったことを扱ってます。
割とヒマな人、2019年頃にアドビ製品を全部絶った「脱アドビ」を達成。
映像制作やYouTube、動画マーケティングなどに関する情報を配信中。