「アドビ令和の変」から約1年、「脱アドビ」から「アドビフリー」へ

今から1年近く前、アドビによる突然の規約変更に端を発した一連の騒動、いわゆる「アドビ令和の変」はtwitterを中心に世間(とはいってもニッチな界隈)を騒がせた。問題の核心はといえばアドビがドルビー社にライセンス料を支払ってこなかったことによる訴訟問題とそのとばっちりという何ともお粗末なものだったが、この件でアドビに不信感を抱く人がよほど多かったのか、僕が運営しているAffinity DesignerやAffinity Photoのユーザーグループ「Affinity User Group JAPAN」のメンバーがその時期あたりから急速に増え出し、今では500人以上が参加してくれた結果かなり大きなユーザーグループに成長した。

そんな「アドビ令和の変」だが、あれから時は流れ、その中で僕自身が感じるアドビレスな1年を振り返ってみたいと思う。

制作業務での完全アドビレスの内容とそのフロー

アドビCCを解約してから大分経つがやはり一度もアドビ製品が必要だと感じる場面は一度もなかった。こう書いてしまうとなんの面白味もないため普段僕がアドビ製品でこなしていたフローをどういったツール(以前の記事で紹介したものとほぼ変わらない)で代替しているかということと、その比較を簡単に述べていく。
なお、当然のことだがこれはあくまでも一個人の用途におけるただの感想であって思い込みや間違いが含まれている可能性があることを理解いただきたい。これから紹介する代替アプリはどれも素晴らしいものばかりだがそれに異見ががあるといった場合にはぜひコメントにて指摘いただければと思う。

まずはPhotoshopとIllustratorの代替ツールはいよいよ普及してきた感の出てきたAffinity PhotoAffinity Designer(ありがたいことに日本人によるチュートリアル動画も増えてきた)。買った瞬間から大のお気に入りだが用途はPhotoshopとIllustratorを使っていた時とほぼ同じ。違う部分はAffinity DesignerがIllustratorのもつ役割と違っていて、普段のお絵描き(ビットマップも普通に扱える)からwebのモックアップ制作などまでこなせることだ。
Photoshopでwebサイトのデザインを作っていた時はよく「なんで写真加工ソフトでwebサイトのデザインしなきゃならないんだ」と思っていたがそれも昔。今ではAffinity Designerを使って楽しくかつ快適にwebサイトのデザイン作成に利用している。
少し前までは日本語のテキスト処理に問題を抱えたバージョンもあったがそれも解決済み。Affinity Publisherも登場し、その連携機能により利便性が向上していることもあるが、AD自体も着実に使い勝手を向上させている。特にiPad版だとApple Pencileとの連携でより素晴らしく、すまいるきっきにおけるイラスト制作の90%以上はiPad版で作り上げたものだ。

なお、直近の話になると印刷会社のgraphicさんでは対応表明こそしていないもののPDF入稿は問題ないことを確認しているし、プリントエクスプレスさんに至っては4月よりADデータへの正式表明をしている。こうしたことにより、日本においての普及の下地も確実にできつつある。

その開発元であるSerifは今回の新型コロナウイルス騒動におけるクリエイター支援策の一環として現在全てのアプリ(Mac版 / Win版 / iPad版)を半額セールとしている。ここで敢えて言わせてもらうとちょっとでも気になっていたという方は今のうちに買っておくといい、買っておいて損をすることはないと断言する。そのレスポンスの高速性やモダンな操作性に驚くハズだ。

で、現在のメイン事業である映像制作おいてはDaVinci Resolve Studioが圧倒的に気に入っていてそればかり使っている(FCPXも持っているし気に入っているが使っていない)。
その代替元であるPremiere Proだが、そちらはその名称に始まりUI、使い勝手ともにあまり好きになれないツールだ。

単体としての機能で見れば無償版のDaVinci Resolveに遥かに劣るし、色補正の面で見るとLumetriカラーは32bitの色空間として処理しているようだが各処理をレイヤー的に扱うという欠点とエフェクトの質(ビット数的に)に疑問があるし、何よりレスポンスなどのパフォーマンスが悪くて使っていて楽しくない(解約時に利用していたバージョンの話。現バージョンだと違う印象になるかもしれない。ちなみに、現在のPrは推奨動作環境でメモリ容量が32GBとなっているが、DaVinci Resolveは開発元であるBlackmagicが8K60pですらメモリが16GBあれば問題ないという発言をしている。Pr、なぜあんなに低機能なのにメモリ馬鹿喰いなのか)。個人的な感想として昔から常々考えているのは「Premiere ProはAfter Effectsがあればこそのアプリ」であり、そのAfter Effectsがなければ価値はないと思っている。見方を変えるとAEはそれくらい強力なツールだということだ。

さてそのAfter Effectsだが、購入当時から現在までずっと気に入っているクールなツールだが、その代替としての役割はFusionがほぼ完全にカバーしている(Fusionは単体版もあるがこの場合はDaVinci Resolveに内包されたFusionのこと)。
Fusion自体は動作が(AEと比較して)高速なこと、ネイティブで3D空間に対応していることなどAfter Effectsの上位互換的な使い方ができる場面が多い強力なツールだが、使い方に関する情報量(特に日本語)が少ないことやプラグインなどの開発がAfter Effectsほど活発ではないことが祟ってあまり日の目を見ることがない不憫なツールだ。

実際の使い勝手の面でAfter Effectsが優っていると感じる部分はやはりIllustratorと組み合わせて使えるマスクやモーションパス、ベクターデータのインポートによるほぼ無制限の拡大縮小だろうか。ただ、ベクターデータ云々以外は慣れでどうにでもなる問題ではあるし、ベクターデータにしてもあまり必要だと感じるシーンはないので気にならない。

余談だが、最近キャラクターアニメーションにMOHO(モーホー)というツールを導入して時間を見ては習得を試みている。クセがある上にレスポンスの良くないレガシーなアプリだが、慣れればAfter Effectsでキャラクターアニメーションを作るのとそう変わらないことができそうな感触で気に入っている。

大事なのは「アドビフリー」

この記事を書く前は「そこそこの文量で簡潔に書こう」と考えていたが、書きたいことを書いているうちに結局長文になってしまった。
そして、こうも長文を書いてきたのにナンだが多分今後何年にも渡って「脱アドビ」が一般的になることなどはなく、Adobe Creative Cloudは制作業務に携わる人間にとっての定番ツールであり続けるんだろうと思う。それは別に悪いことではないし、その過程において僕が昔大好きだったPhotoshopやIllustratorが以前のようなクールなツールになってくれればそれはとても喜ばしいことだ。

最近考えることは、大事なのは「脱アドビ」ではなく「アドビフリー」なのだという考え。
僕にとっての「アドビフリー」とは、アドビ製品を完全に捨て去るのではなく、必要に応じて様々なツールを柔軟に使い分ける姿勢、その選択肢の中にきちんとアドビを据え置きつつも代替アプリも用意しておく、そういう緩やかな移行と柔軟な使い方が多くの人に受け容れてもらいやすく、結果としてアドビ製品の進化(= ライバルアプリたちの進化)に寄与するのではないだろうか。

僕自身は今後アドビ製品を使うことは(講師業での利用を除いて)ないかもしれないが、PhotoshopやIllustratorの進化は追いかけてみたい、そういう意味で時々は触れることがあるかもしれない。それで納得のいく使い勝手であれば「逆アドビフリー」を実践し、それまで築いたワークフローに取り入れてみるのもいいかもしれない。

それまではアドビがまた何かやらかさないといいが、そのことについては今は考えないようにする。

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