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いよいよ登場、iPad版Final Cut Pro。期待するのは…

つい先日、 5年以上前からiPad版Final Cut Proが出る出る詐欺をやってた僕の妄言がついに実現した。
一緒にリリースされたiPad版Logic Proは置いておいて(あまり関心がない)、製品の紹介ページをざっと読む限りではそこまで高度な機能を備えているようには見えず「M1以降のチップを積んだモデルじゃないと動かない理由がない」ように思えたが、これは多分ProResやProRes RAWを処理するための「メディアエンジン」の存在が大きいのだろう。

発表されたiPad版Final Cut Pro。使えるのはM1チップ以降を積んだごく最近のiPadのみ。
発表されたiPad版Final Cut Pro。使えるのはM1チップ以降を積んだごく最近のiPadのみ。

個人的に気になったのはタイムラインのスクロールにはジョグホイールを利用する(追加、もしくは指先の挙動により大まかな動きから微調整まで変動するのかもしれない)ということとApple Pencilを活用できそうだということ。前者はiPad版DaVinci Resolveよりも快適な操作性を期待できるし、Apple Pencilでは画面に描いたグラフィックをアニメーションさせることも可能かもしれない。

Apple Pencilの活用サンプル。画面をよく見ると真ん中上にペンアイコンがあるのがわかる。
Apple Pencilの活用サンプル。画面をよく見ると真ん中上にペンアイコンがあるのがわかる。

MotionやCompressorはどうなる?

Final Cut Proといえば、そのセットツールともいえる「Motion」と「Compressor」はどうなるのか?
今回の発表においては登場しなかったが、作業を極力iPadのみで完結させようとするとデスクトップ版FCP単体でも機能不足な現状を考えるとiPad版を出すべきではと考えもするが、どちらもFCP本体ほどには利用されているわけではなさそうなので開発における優先順位は低いということなのかもしれない。

一時期Motionを使おうと必死にトレーニングしたことがあるが、あの不安定さには呆れさせられた。Appleあるあるだが「ナゼか純正ソフトが一番不安定」を地で行くようなツールでとても業務では使えるレベルではないと判断、素直にAfter Effectsを覚えることにしたのはいい思い出だ。

疑問点は「色補正性能」と「サブスク」

ところで、このAppにはちょっとした疑問がある、それは「色補正機能」と「サブスクモデル」のふたつだ。

色補正機能に関しては、カラーに関する機能を紹介する場面で使われている操作画面を見ると色補正機能はデスクトップ版に比べ大きく劣るようだ。ただでさえ窮屈なUIなので仕方がないがビデオスコープを無理やり詰め込んだのはいいものの、肝心のパラメーターを組み込む余地はほぼなさそうだ(タブ的に表示を切り替えられるかもしれないが、どちらにせよビデオスコープは必須なのでそこ以外に詰め込まないといけなくなる)。
DaVinci Resolveのようにページという概念を持たないFCPだと現時点では本格的なカラーコレクション・カラーグレーディングは想定していないのかもしれない。だからこそデスクトップ版へプロジェクトを転送できることの意味が出てくるのかもしれないが、ここはもう少し頑張って欲しかった。

もうひとつの疑問点である「サブスクモデル」。サブスク自体は今時珍しくはないが、価格が高い安い(月額700円/年額7,000円。)ではなく僕が気になっているのは買い切り版であるデスクトップ版とはチグハグな組み合わせに思えるということだ。

App Storeでの販売が始まって以来、これまで無償でアップデートを繰り返してきたFCP。Appleにとっては新規Macユーザーの獲得や買い替え・買い増しのサイクルをコントロールするためにもそれなりの役割を果たしてきたであろうこのAppだが、進化の度合いが比較的速い映像業界においてはFCPのそれはかなり緩やかでお世辞にも革新・先進的な機能というものは長らくなかった。
そう考えると、ひょっとしてこのデスクトップ版もそう遠くないうちに大規模なアップデートとセットでサブスクモデルに移行するじゃないかと個人的に予想している(既存ユーザーからは反感を買いそうだけれども)。それが実現すれば開発にこれまで以上の予算を振ることができるハズなので結果としてはFCPがより良いものになるだろう。

高機能な純正Appに期待する次の革新

それはずばり「外部プラグインを導入可能にする」ことだ。紹介ページを確認すると近いうちに「他社製コンテンツ」が利用可能になるようだが、これはタイトル(ひょっとするとトランジションも)のみを指すものでプラグインという扱いではないように思える。
冒頭でLogic Proには関心がないと書いたが、Logic ProのようなDAWこそデスクトップ版なら外部プラグインで埋め尽くされているくらいの勢いで大量のプラグインをインストールしているのがプロユーザーというもので、程度は違えど動画編集ソフトであるFCPもプラグインを導入しているユーザーは少なくないだろう。

念のため説明しておくと、プラグインというのは特定の機能やエフェクトを有償・無償なりで購入しそれをホストとなるApp(この場合はFCP)に導入してあたかもそのホストAppの機能の一部のように動作させることができるものとなる。
これにより比較的簡単な操作で複雑な処理ができるようになる、あるいはホストAppだけでは実現できない特殊なエフェクトが利用可能になるなど、業務において欠かせないツールとなっている。

現状ではこの外部プラグインの導入はiPadOSの制限により行えないものの、いずれ何らかのカタチで実現できるはず…というか、これができるようになってこそ初めて「Pro」用ツール。Appleがようやく重い腰を上げてFCPiPadで利用可能にしたことは、将来的にiPadがクリエイティブ業務においてもメイン気になり得るということを打ち出してくる可能性があり、それを考えればプラグインをインストールできるようにするというのはある意味当たり前のことなのだ。

その他にも、上述したMotionやCompressorもリリースされると仮定すればアプリ間での連携機能をiPadOSに加える必要が出てくる。Appleとしてはこのふたつのアプリは出さないような気がしている(CompressorはともかくMotionはiPadの小さな画面では十分な実用性を確保するのが難しそうだ)が、アプリ間での連携機能はAffinity PhotoやAffinity Designerなどはもちろん、アドビ製品群においても重要な役割を持つため喜ぶユーザーは多いだろう(それにも関わらず実装されてこなかった。わざわざiOSとiPadOSを分けたのに…)。

まとめると、今回の発表は多くのFCPユーザーを喜ばせるだろうがそれ以外の人に対する訴求力は極めて小さいと考える。現時点ですでにFCPよりも遥かに高機能なDaVinci Resolve for iPadが無償でも使える(そして今後Fusionなどの超高機能な機能・ページも追加されていく)のに、わざわざお金を払ってまでFCPを使いたいと思える新規ユーザーがどれほどいるのか…僕はといえば正直FCPに期待することはほとんどないので利用する気はない。デスクトップ版Final Cut Proというツールは素晴らしいモノだし大好きなツールであるのも間違いないが、今の僕のニーズに合致する部分があまりにも少ないからというのがその理由。ただ、今後が楽しみなツールがまたひとつ増えたこともまた間違いないだろう。

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