WWDC22にて発表が期待されていた次期Mac Proだが結局発表されることはなく、肩透かしをくらった感はあるものの、Mac Proと同じくらい楽しみにしていたM2チップの発表、そしてそれに付随するカタチで新型MacBook AirとMacBook Pro 13インチモデルが発表された。
MBPの方はともかくとして、MacBook AirはM2チップの搭載だけでなくデザインの刷新、カメラの高画素化、音質の改善など多岐に渡り、前モデルの時点で映像制作にも十分耐え得るプロ向けマシン感が漂っていたものがいよいよProモデルを喰ってかかろうとするほどの仕上がりになっている。
その2モデルの詳細は今後の記事とすることにして、今回はその2モデルに共通するキーワードである「New Appleシリコン」について思うところを書いてみる。
少し残念なM2チップ
今から2年前に発表されたAppleシリコンへの移行。それまでのインテルCPUに対してどれだけのアドバンテージがあるのかということは多くの人が抱えた疑問だったに違いないが、フタを開けてみればその消費電力に対して猛烈なパフォーマンスを発揮する「超優等生」なM1チップを搭載したMacシリーズが誕生した。
当時は1年ごとに新チップをリリース/リプレースしていくのだと考えていたが、MacBook AirやMacBook Pro、Mac MiniにiMacときてMac Studioという新モデルを全てM1チップの派生型で製造することで、結果を見ればおよそ2年周期でM1からM2へとバトンを渡すカタチになっている(当分の間はM2搭載モデル発売後もM1チップ搭載モデルを併売するようだ)。
となれば、このM2が今後2年間にリリースされるMacのベースとなるのは明らかで、年末以降に登場するであろう16インチMacBook ProやMac Studioに搭載されるM2 Pro / Max / Ultraの性能はこのM2に準じ倍々ゲームとなっていくことが予想できる。
このことから今のMacシリーズは進化の度合いが予想しやすくあまり面白みがないかもしれないが、次の2年間を引っ張っていく土台である「無印M2チップ」の素性に関しては今後しっかりとチェックしないといけない。
で、このM2、パッと見た限りでは「少し期待外れ、よくて順当。これをベースにしてこのあと2年間Windowsマシンと戦えるのか少し不安」といった印象。
メモリ搭載量はDaVinci Resolveユーザーにとって大きなアップデート(8GBしかメモリを積んでいないモデルではレンダリング時にノイズが出たりする問題があった)ではあるものの、単純な性能面では2年という時間があった割には上げ幅は高くない。CPU性能の最大18%の高速化は「フツー」、GPU性能はコアを3割近く(8コアから10コアへ)も増やしてようやく最大35%高速化というのを考えるとコア単体の性能はあまり変わっていないように思える、要は「力技できたな」ということだ。
もちろん、今時のベンチマークには単純なパフォーマンスだけなく消費電力対性能比を加味しなければならないが、その点については引き続きかなり優秀だと思える。
プロセスルールがこれまでどおりの5nm(第2世代)というのも引っかかる…M1チップの製造元である台湾のTSMCではそう遠くないうちに4nmのプロセスルールが利用できるはずで、それを利用できていればより魅力的なアップデートとすることができていただろうにと思う。
意外な注目点としてはProRes素材を高速にエンコード・デコード処理をすることができるメディアエンジンを積んでいるところだろうか、M1シリーズではPro以降に搭載されていた機能が使えるというのは多くの動画編集者にとってはありがたいアップデートとなるはずだ。
長々と書いてきたが、Mシリーズの進化が毎回この調子であればインテルマシンであった頃とそう変わらないペースになりそうで、正直今後の進化にはあまりサプライズはなさそうだと感じてしまった(これが1番大きなガッカリ)。
とはいえM2チップが引き続き優秀で超高性能なチップであるのは間違いないのは確かなので、そういう意味では安心して来たる次期Mac Proの登場を待つことにする。
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