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新型M3 MBPに垣間見える「出し惜しみ感」と「残念感」

ひと月ほど前までは「今年はもう新型のMacは登場しない」と噂されていた(海外の著名リーカーもそう言っていた)が、それがAppleの発表会イベント直前になってM3 MacBook Pro登場の噂が立ち始め、イベントでまさかの新型MacBook Pro。
搭載してきたチップはもちろん最新のM3、それもM3 Maxチップを筆頭としたハイエンドモデルたちだった。

Appleシリコンに移行してからまだそれほど時間は経過していないが、それでもこれまでであればまずは廉価な無印M3チップ搭載機の登場から始まり、そこから間を置いてのM3 Pro / M3 Max搭載機リリースだとばかり思っていた僕にとっては驚きだったし、今年の2月にM2 MacBook Proのリリースからわずか10ヶ月というスパンの短さにも驚かされた。

思い返せば開発が遅れに遅れていると言われていたM2 MacBook Proのリリースが単純に遅すぎただけなのかもしれないが、そのM2 MacBook Proを買ってしまった僕涙目…と思ったら全然そんなことはなかった。

一部モデルの性能向上率は「微増」、価格は「増」

今回のモデルからはプロセスルールが3nmに微細化された「M3チップ」を搭載。そのおかげで5nmのプロセスルールだった前モデルからかなりの進化を遂げた部分がいくつもある。

わかりやすいところでいうとレイトレーシングのハードウェアアクセラレーション対応。ハードウェアアクセラレーションにしてはあまりパフォーマンスが高くないように見えるが、何はともあれ3DCGに業務やゲームで触れる人にとっては嬉しいアップデートだろう。

その他にはYouTubeでよく利用されているAV1コーデックへの対応(デコードのみ)やGPU性能の最適化を行う「Dynamic Caching」、最上位グレードのみに限られるものの高性能コアが1.5倍(+4コアで計12コアに)増えている。
高性能コアのクロック周波数も最大4.05GHzと大幅に向上している(M2は最大3.504GHz)し、特に高効率コアの性能向上が著しい(M2が最大2.424 GHz、M3が最大3.5 GHz)ため、CPU性能だけでいえば前モデルを遥かに上回ると思われる。

このように見ると全体としてM2チップ搭載機から大きく進化しているように見える新型MBPだが、AppleのサイトにはM1チップ搭載機やインテルMacとの比較が主でM2チップとの差にはあまり言及していない。
おかしいと思いM3チップの細かな仕様や各グレードを比較して見ていくと無印M3からM3 Maxの下位グレードまで、要はM3 Maxの上位グレード以外のチップではメモリの帯域幅が前モデルよりも劣っている(50〜100GB/s)。それが影響してか各種ベンチマークを見ても上位グレード以外ではM2チップとの明確な優位性が見出しづらくなっている。(3DCG系の処理では一部で顕著に高速化する処理がある模様)

M2 Proとの差わずか0.2倍。
M2 Proとの差わずか0.2倍。

もうひとつ、その見えづらい優位性を説明することのできるポイントがある。それはチップを構成するトランジスタ数にもこれまでになかった変化が起きているということだ。
M2チップの頃のM2 Proのトランジスタ数は400億。対してM2 Maxは670億と、その差1.7倍弱ほどでしかなかったが、今回はその差が大きく変動し370億(M3 Pro)と920億(M3 Max)と、2.5倍近くもの差が開いてしまっている。というか、M2 Proよりも少ないトランジスタ数になっていることに驚きだ。その差を覆せるほどの性能があるということの裏返しか。

そういう意味で今回一番コストパフォーマンスの低いモデルはM3 Pro機といってしまっていいかもしれない、なんでこんなヒドい扱いを受けているんだM3 Proチップ…。

今回貧乏くじを引いたカタチになるM3 Pro。このゾーンは売れないのか?
今回貧乏くじを引いたカタチになるM3 Pro。このゾーンは売れないのか?

下位モデルはしょうがないとしてもM3 Proの扱いの低下、そしてM3 Maxの下位グレードまで及ぶ露骨な差別化はまったく予想していなかった。こうなると価格を考えなければ「もっとも買いなのはM3 Maxの最上位グレード搭載モデル」と言いたくなるが、その価格も近年の為替やベースモデルの値上げ(本国サイトで確認したところ一番安価なモデルでもM2モデル発売時より100ドルほど値上げしている)などなどが影響してかなり高額になってしまっているのが辛いところ。

試しにM3 MacBook Proを僕が今年1月に購入したM2 MacBook Pro(16インチ / M2 Max / 96GBメモリ / 4TBストレージ)と同じ構成にしてみる(M3 Maxでは96GBメモリの選択肢がないが金額は表示されるので、それをざっくりと足してみた)と868,800円。同じグレードのM2 Maxが当時750,800円だったので12万円近くも高くなってしまっていることになる。
ちなみに、16インチ / 最上グレードのM3 Max / 128GBメモリ / 4TBストレージで構成すると924,800円に…さすがに高すぎやしませんかね。

業務で使い込むことを想定するとこれくらいの構成にできるとベターだが90万超はちょっと…。
業務で使い込むことを想定するとこれくらいの構成にできるとベターだが90万超はちょっと…。

まあ、そんな面倒な比較をするまでもなく全ての構成で思いっきり値上げされているのが一目でわかったりするが、正直ハイグレードモデルじゃなければM2機と大差のない今回のラインナップじゃM2 MBPユーザーどころかM1 MBPユーザーにもあまり響かないような気がするというのが正直な感想…間違いなく強力なチップなのはわかるものの、差別化のやり方があまりにも意地が悪いというか最上位グレードを買わせる固い決意みたいなものを感じてしまって気が滅入る。

これらをまとめて考えるとM3チップを搭載したMacBook Proはあまり魅力的とはいえない。
唯一魅力的だと思えるものはM3 Maxの最上位グレードチップを積んだモデル(もちろんメモリは128GBをチョイス)だが、ここまで高額な製品になってくると…まあ買う人は限られるよなあと思う。

Wi-Fi 7やThunderbolt 5も搭載していないことだし今回僕はM3 MBPはスルー。ひとまず買おうと考え出したM3 Ultra搭載のMac Studioを待つことにするけど、この調子だとノート・デスクトップともにM4チップの登場を待つことになるかもしれない。
Apple、ピーク性能はWin機の半分もないんだからしょうもないカラー追加したりイメージだけで中身空っぽなPV作らずもっとしっかり仕事しろ!

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